朝日新聞に読者の声を集めた「声」というコーナーがありますが、十一月十八日付でとても素晴らしい話がありました。
千葉県鎌ヶ谷市にお住まいの八十八才の方のお話です。
十七年間飼っていた二匹の亀の将来を思って近くのお寺の池に放しに行ったところ、放たれた亀がおじいさんの後を追いかけて戻ってきた、という話であります。
十七年前にお祭の夜に買った小さな二匹の亀はオスはクロ、メスはチビ、と名付けられて甲羅の大きさが三十センチに迄育ったそうであります。
メスのチビは散歩につれてきてもらったと思ったのでしょうか、すぐに池に飛びこんだそうですが、オスのクロは足元にまとわりついていたそうであります。
おじいさんが本堂で「亀をお願いします」と祈って帰りかけたところ、二匹の亀はネズミのように亀にしては早駆けで追いかけてきたそうであります。
おじいさん自身も亀がこんなになついていたとは想像していなかったようで、大切に連れて帰ったそうであります。
亀と人との間にどのような理解の仕方が存在するのか全くわかりませんが、少なくとも亀に何かわかるか、などという思いがあるとすれば、それは大きな誤りであるということだけは確かなようであります。
人は自分の理解の範囲内で物事を判断し易いものでありますが、とらわれ、こだわり、といったことから少しづつ解放されて、自分の中の自然さをどんどん出してゆきたいものであります。
又、合気道の稽古もそのような方向に添うものであって欲しいと願っております。
この記事に関連して、十一月二十六日付で「読者の反響続々」と声編集長からの報告がありました。