新年を迎えて

 新らしい年を迎えて、各々が志もあらたに益々精進を重ねて暦の進む速さにも負けない様、常にあたらしい自己の発見という境地に分け入ってみたいものであります。
 省りみれば昨年は東西思想統一への第一歩が形となった記念すべき年でありました。
 一方では、統一という名のもとに戦争が勃発し地球規模で大きく揺れ動いているのは皆様もご承知の通りであります。
 多くの人々が取るべき最良の道を模索する時代がまだまだ続くのでありましょうか。
 大切とされることが自明であったとしても不自然にこだわれば調和は次の調和を求めて破れ、生じて行くものであると思います。
 当連盟も昨年、昭和五十五年七月十三日会員一号である矢澤慶樹君(当時九才)の入会以来十年の足跡を残しました。
 記すべきこれといった大きな行事もなく、ひたすらに打ち込む稽古の日々でありました。
 しかし乍ら自信をもって言えることは、十年間のこうした当連盟の姿勢が稽古を通じて、男は男らしく、女は女らしく同志一人一人の心身の内に深く広く育くまれ生成化育に寄与しているものと信じます。
 自己の外に何かを求めることも大切でありそれはそれなりに価値のあることと思います。
 同時に自己の内に新らたな発見を認めて行くことも又素晴らしいことであります。
 「合気道が自己発見の優れた法であることを知ることは言葉というものが真実ということの表現法であることを知ること」と少しも異ならないと思います。
 昨年の春風会の席上十周年に際し、文集でも、という発言もありましたがうやむやとなっていましたところ一人の寄稿がありました。
 たった一人ではありますが、是非皆様に読んで頂き度く茲に添付いたします。
 註・寄稿は平成元年十月八日入会の飯田龍三郎さんからで「行き着く先に目的があるのではなく、道程を歩むこと自体が生きている証しでは」とありました。